エクソソームの仕組み
エクソソームとは、体の中のあらゆる細胞が出すカプセル状の微粒子である。直径が50〜150nm(nm:10億分の1メートル)で、電子顕微鏡でやっと見える大きさである。エクソソームは、細胞内や細胞と細胞の間だけでなく、血液や涙など体液にも存在しており、体内を循環している。人体を構成する細胞約37兆個よりも多い、約100兆個ものエクソソームが人体を流れている。しかも人間や他の動物だけでなく、野菜や卵などにもエクソソームは存在する。
実は1つ1つの細胞にも、代謝や排泄のような仕組みがある。1980年代まで、エクソソームの役割は、細胞が放出する「ごみ袋」として、細胞内の余分なタンパク質などの不要物を細胞外に持ち出し、捨てることのみであると認識されていた。
しかし、1996年に、エクソソームが他の細胞に物質を輸送する機能を持つことが発見された。さらに2007年には、エクソソームの中に大量の遺伝子複写情報(以下 マイクロRNA)があり、エクソソームは細胞間の情報伝達、コミュニケーションツールとして機能していることが明らかになった。

二つのはたらき 「悪さ役」と「助っ人役」
病気になるとエクソソームの分泌量が通常より何十倍も増えることから、エクソソームは病態の進展に深く関与していることが2010年頃に明らかとなった。
たとえば、がんとの関係においては、がん細胞から放出されるエクソソームは、がん細胞の生存、悪性化、転移などに関与し、がん細胞に有利に働くよう機能することがわかっている。
卵巣がんの腹膜への転移の仕組みを例にとると、卵巣がんの細胞が放ったエクソソームは腹膜表面バリアを構成している細胞の中へ侵入し、メッセージ物質の遺伝子複写情報(以下 マイクロRNA)を届ける。「役割はもう終わり」という死のメッセージを受け取った腹膜表面の細胞は死滅し始め、穴ができる。卵巣のがん細胞はその穴から簡単に腹膜に入り込み、増殖を繰り返すというのだ。
また、胃がんの原因といわれるピロリ菌も、エクソソームを放出して、胃粘膜上皮細胞に働きかけ、病気を引き起こすことが明らかとなっている。このように、疾病にかかわるエクソソームはいわば「悪さ役」としてはたらく。
一方で、人体に良い影響を及ぼし、健康を保とうとする「助っ人役」のエクソソームも存在する。正常細胞は、周囲にがん細胞が生じた場合、普段は持ち合わせていない種類のマイクロRNAなどをエクソソームに含めて分泌する。放出された「助っ人役」のエクソソームは、がん細胞の周辺に駆け付けて侵入し、がん細胞の増殖を抑制しようとする。また、ダメージを受けた細胞には正常な情報を伝え修復を助けている。また、母親の母乳には免疫に関わるマイクロRNAが含まれるエクソソームが多数存在する。赤ちゃんの免疫増強にも関与しているとされる。

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